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しぐれ茶屋おりくの部屋

しぐれ茶屋おりくの部屋

ふたりの風景画

      
      真っ白な大きな画布に

      先ず最初に僕が一本の樹木を描いた

      それは大好きなイチョウの古木

      黄緑色に陽が射し込んで

      金粉を散りばめているような

      若葉が天使を呼び寄せているような

      そんな樹木を描いたんだ


      それが二本になり三本になり

      何時の間にか 

      ハイネの詩に出てくるような

      写実的な西洋絵画のような

      森を形づくっていた


      或る日突然

      一匹の白兎の絵が描き加えられていた

      きっと君が描いたんだね


      僕は嬉しくなって

      画布の左に白樺の樹を植えた

      すると君が青く澄み渡った

      楕円形の湖を描き入れた


      僕の手で右上方に太陽を輝かせると


      湖畔には優しい小花をいっぱい

      赤、黄、紫、黄色、ピンクの彩りを

      君が描き入れた


      僕はすかさず湖面に

      つの字の首をした白鳥を浮かばせた


      すると画布の左方から右へと

      七色の虹の架け橋を君が描き足した


      こうして僕たちの風景画が

      誕生した


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